「セスナでGO!ふたたび」  


前回撮り損ねた西一の撮影のため、和歌山に帰りふたたびセスナに乗ることに。

『枯木灘遊覧コース』に『見老津上空旋回』を無理やり加えてもらったのは前回。
またお願いするのはさすがに厚かましいので今回は「チャーター」することにした。
何人乗っても料金は同じなので、友人のひろちゃんと姉を招待する。

「今日はチャーターだから窓も開けてもらっていいですよ」とパイロットさん。
前回、窓を開けられないことに落胆していたのを覚えていてくれたのだ。
「好きな高度、コース、ご希望どおりに飛びます」
さすがチャーター。何でもOKなのだ。
「今日は北の風が強いですよ。かなり揺れると思いますが皆さん大丈夫ですか?」
「だいじょうブイ〜!ですよ」
余裕の3人。


いざ離陸。
直後から、ガタガタガタッと揺れだした。
隣の姉は顔が引きつっている。
ものすごい揺れだ。墜ちたらどうしよう。
墜ちたら墜ちたときだ。そんなことよりいい写真を撮らねば。
でも、撮る前に酔いそう・・・。

見老津上空に差し掛かった。
「けんちゃん、見てくれてるかな〜!?」
はしゃぐひろちゃん。
ひろちゃんのだんな様は元F15戦闘機のパイロット。
微笑ましく見上げてくれているだろう。

まずは東一周辺から旋回スタート。
おお・・・前回よりも気持ち悪い・・・。この揺れは想像以上だ。
それよりもブレないかが心配だ。
それに窓は開けていてもとても顔を出して撮れたものではない。
時速約200キロ。猛烈な風でカメラは吹っ飛ぶだろう。
窓ギリギリにカメラを構える。それでも強い風でカメラは揺れる。
さらに飛行機の横揺れがすごく、目標がファインダーにうまく収まらない。
「これでちゃんと撮れてたら天才やな・・・・」

エビス上空、陸の黒島上空、沖の黒島上空・・・・と
前回と同じコースで撮っていく。
隣の姉はエチケット袋をかかえて青ざめている。
ひろちゃんもパイロットの隣で今はぐったりしている。
Yは撮り続ける。
チャーター料、1200円/1分。
酔っている時間などないのだ。

いよいよ西一周辺だ。
こんどこそ、間違いなく撮らねば。
パイロットさんは絶妙の高度で旋回してくれる。
これを撮れば最後だ。

「ありがとうございましたー。OKですー」
「もういいですか?ご希望のところ飛びますよ」
時計を見る。
ひょえええええ〜!!!
離陸から30分をとうに過ぎている。
「いえ、もう大丈夫ですー」
平静を装い答えるY。
帰って帰って、とっとと帰ってえ〜!!

着陸と同時に「おええええ〜」と戻す姉。
Yは転がり落ちるようにセスナから降り、うずくまる。
ひろちゃんはフラフラと歩いていく。

精算を終え、空っぽの財布を手にロビーで休憩していると、パイロットさんが
「今日の揺れではプロのカメラマンでも難しかったと思いますよ。ちゃんと撮れましたか?」
心配そうに聞いてくれる。
撮れていなくてもあきらめるしかない。
もう鼻血も出ないのだ。

すぐ現像に走り、祈るように出来上がりを確認する。
1枚もブレていない。

「天才や・・・・・」






航空写真

我々が乗ったセスナ F15戦闘機 
撮影:Y(2枚とも)